PR

インフラエンジニア未経験の求人が多い理由|1つの席に4.5人が要る仕組み

インフラエンジニア未経験の求人が多い理由|1つの席に4.5人が要る仕組み ITエンジニアの仕事と年収
この記事には広告(アフィリエイトリンク)が含まれています。

インフラエンジニアの求人には「未経験歓迎」が並びます。研修あり、資格支援あり、学歴不問。ITの仕事なのに、なぜここだけ入口が開いているのか。

理由として一番よく書かれているのは「IT業界は人手不足だから」です。ただ、この説明では足りません。人手不足はソフトウェア開発でも同じなのに、開発の求人に「未経験歓迎」はほとんど並ばないからです。

求人は、優しさからは出てきません。出るのは、そこに埋めなければならない席があるときだけです。

そこで、インフラの現場に未経験の席ができる理由を、時間と料金の計算からたどってみました。官公庁の入札説明書、監視サービスの公開価格表、厚生労働省の統計を、1つずつ開いて拾っています。

先に結論を書きます。

24時間365日を1つの席で埋めるには、1人ではなく4.5人が要る。 これは技術の話ではなく、割り算の話です。そして会社にとって、その席を埋める人が経験者である必要は、必ずしもありません。 未経験歓迎は、この2つが重なったところに生まれています。

インフラエンジニア未経験の求人が多いのは、人手不足だからではない

インフラの現場に未経験の入口があるのは、「人が足りないから」ではなく「止められない設備を、人が交代で見張る必要があるから」です。設備は先に建っていて、動かし続けること自体が商品になっています。だから、作る人ではなく、見張る人の席が先に必要になるのです。

ここが、開発の仕事との一番大きな違いになります。

開発は、作るものが決まってから人を集めます。作り終われば、その人数は要らなくなる。一方、インフラは逆でした。サーバーやネットワークは、置いた瞬間から動き続けることが仕事になります。 動き続けているかを誰かが見ていなければ、止まったことに気づけません。

そして、動き続けるものを見張る仕事には、開発には無い制約が1つあります。時間です。

この「設備が先に立っていて、止められない」という構造そのものは、インフラエンジニアはやめとけ?データセンターの儲かる仕組みで考えるで、データセンターの側から書きました。ここでは、その構造から未経験の席がどう生まれるかだけに絞ります。

未経験の席はなぜ空くのか|24時間365日を1つの席で埋めると4.5人が要る

1年8,760時間を一般労働者の年間労働1,926時間で割ると、1つの席を埋めるのに4.5人が要る。

1年は8,760時間あります。日本の一般労働者が1年に実際に働く時間は、2025年で1,926時間でした※1。1つの席を1年間途切れなく埋めるには、8,760 ÷ 1,926 = 4.5人が要る計算になります。1席に4.5人。 これが、インフラの現場に未経験の入口ができる一番の理由です。

割り算の中身は、次のとおりでした。

項目 数字 出どころ
1年の総時間(24時間 × 365日) 8,760時間 計算
一般労働者1人の年間総実労働時間(2025年) 1,926時間 毎月勤労統計調査※1※2
1つの席を1年埋めるのに必要な人数 4.5人 8,760 ÷ 1,926【計算】

内訳は、所定内が1,768時間、所定外(残業)が158時間です※1。休憩も有給休暇も除いた、実際に働いた時間だけを数えた数字になります。

この4.5人という数字が、インフラの求人票の形を決めていました。

開発の仕事は「1人月の仕事を1人でやる」と数えられるものです。ところが24時間の監視は、1人月の仕事を1人ではできません。 人間は眠るからです。深夜3時に画面の前にいる人が要る以上、同じ席に対して4人から5人を用意しなければ、年が越せない。

そして、ここからが本題になります。この4.5人のうち、全員が設計のできる経験者である必要はありません。

止まったかどうかを見て、決められた手順で一次対応をして、決められた先に電話をかける。この工程は手順書に落ちています。落とせるからこそ、24時間の担当を交代制にできるのです。手順書に落ちた仕事は、未経験でも初日から工数として数えられます。 逆に、手順書に落とせない仕事は交代制にできないので、そこに未経験の席はできません。

現場では、この24時間365日の体制を「24/365(にーよんさんろくご)」と呼んでいました。求人票の言葉ではなく、現場の言葉です。

インフラエンジニア未経験を採っても採算が合う理由|人月は「単価×稼働率」で決まる

技術者を客先に出す商売の売上は、1人あたりの単価と、その人が契約に入っている割合(稼働率)の掛け算で決まります。単価が低くても、席が埋まっていれば利益は出るのです。逆に、単価が高い人でも席が空いている月は売上がゼロになります。 だから会社にとって、未経験者で埋まる席は、空いている席より確実に良い形でした。

私は派遣とSES(技術者を客先に常駐させる形)の営業を長くやってきました。営業をしていて一番こたえるのは、単価が安いことではありません。誰も入っていない席があることです。

登録型派遣の営業をしていたころ、会社の利益がどこで薄くなるかを身をもって知りました。社会保険料の会社負担、有給休暇の分(働いていない日は顧客に請求できないのに本人には支払う)、求人広告費。そのどれもが、人が席に入っていない期間にも出ていきます。 席が埋まっていない1か月は、取り返せません。

この「単価と稼働率」の構造、そして会社の取り分がどこから出ているかは、SESはやめとけと言われる理由|マージン率が公開されない仕組みに詳しく書きました。入る前に読んでおくと、面接で聞くべきことが変わります。

買う側、つまり発注する会社の計算も見ておきましょう。

監視を外に出したとき、いくらかかるのか。アイティーエム株式会社が公開している運用監視サービス(MSL)の価格表では、電話連絡と手順書に沿った一次対応が付くプランが1ノードあたり月4,400円、エンジニアによる二次対応まで含むプランが月50,600円でした※3。24時間365日の定期運用パックは、1式1ノードあたり月16,500円です。

プラン 月額(1ノード) 含まれるもの
MSL-Lite 4,400円 電話連絡、障害一次対応(手順書対応)
MSL-Standard 15,400円 電話連絡、障害一次対応
MSL-Premium 50,600円 一次対応に加え、エンジニアによる二次対応
定期運用パック 24h365d 16,500円 パッチ対応、再起動対応、アカウント管理

この価格表は、買う側の判断の物差しです。

自社で24時間365日の席を1つ作れば、そこには4.5人分の人件費がかかります。手順書どおりの一次対応だけが要るなら、1ノード月4,400円で外に出したほうが安く済む場面は多い。だから監視は、外に出されるか、専門にする会社へまとめられるのです。

そして、まとめられた先では、その席をまとめて埋める人が要ります。まとめた会社にとって、席を埋める人数は、そのまま売上の器になりました。 未経験歓迎の求人が、個別の事業会社ではなく運用を専門にする会社に集まるのは、この流れの結果です。

ここに、一番大事な一行を置きます。未経験歓迎は、あなたに期待しているという意味ではなく、その席が手順書に落ちているという意味です。 落胆する話ではありません。手順書に落ちているからこそ、経験ゼロの人が給料をもらいながら現場に立てます。

なぜ会社が未経験者の資格代を出すのか|入札の体制図に「所有資格」を書く欄がある

インフラ系の会社に資格支援制度が多いのは、福利厚生だからではありません。発注元へ出す提案書や入札の書類に、担当者の保有資格を書く欄があるからです。 有資格者が社内に何人いるかが、案件を取れるかどうかに直結します。だから受験料は、会社にとって経費ではなく仕込みでした。

これは推測ではなく、実際の入札書類に書いてあることです。

情報処理推進機構(IPA)が2025年11月17日に公告した一般競争入札(総合評価落札方式)の入札説明書には、プロジェクト体制の要件としてこう書かれています※4。

プロジェクト体制図を作成し、プロジェクトメンバーの主担当作業、所有資格、保有スキル、関与度合い等を記載すること。

同じ書類は、さらに具体的に資格の名前を挙げていました。

  • プロジェクトマネージャとして、プロジェクトマネージャ試験・ITストラテジスト試験・システムアーキテクト試験のいずれかに合格し、3年以上の実務経験を有する者を専任で配置すること
  • セキュリティ管理者として、情報セキュリティに関する知識及び技能を有する者を配置すること。情報処理安全確保支援士であることが望ましい
  • クラウドサービスプロバイダーの上級資格者が体制に含まれていること(AWS認定ソリューションアーキテクト-プロフェッショナル、Google Cloud認定プロフェッショナルクラウドアーキテクト、Microsoft認定Azureソリューションアーキテクトエキスパートなどを例示)

発注する側が、資格の名前を指定して体制を求めている。 これが、会社が資格を集める理由です。

働く側から見ると、この構造は入口になります。

未経験者には職務経歴がありません。提案書の体制図に書けることが、何もない。ところが資格は、経験年数ゼロでも書けます。 会社にとっては「書ける行が1つ増える」ことになり、本人にとっては「案件に載せてもらえる理由が1つできる」ことになるのです。未経験の段階で資格が効くのは、実力の証明としてではなく、書類に書けるからでした。

かかるお金も見ておきます。Linuxの技術者認定であるLinuCは、レベル1の101試験・102試験が各16,500円(税込)で、2つ合わせて33,000円です※5。会社が資格支援制度でここを負担するなら、会社は33,000円で、提案書に書ける行を1つ買っていることになります。

この計算が成り立つ会社は、資格支援を続けます。成り立たない会社は続きません。求人票の「資格支援あり」が本物かどうかは、その会社がどんな案件を取りにいっているかで決まるのです。

仕事の中身そのものを先に知っておきたいなら、佐野裕さんの改訂新版 インフラエンジニアの教科書が、ここで扱った「設備が先に立っている」という話を、サーバーやネットワーク機器、データセンターの選び方という実物の側から一冊まるごと扱っています。

インフラエンジニア未経験で入ると、いちばん変わるのは生活の時間帯

24時間365日の席に入るということは、夜に働く日ができるということです。労働基準法は、午後10時から午前5時までの労働に2割5分以上の割増賃金を義務づけています※6。深夜手当は、優遇ではなく、生活の時間帯をずらすことへの対価でした。 ここを理解しておくと、求人票の金額の見え方が変わります。

割増の中身は次のとおりです※6。

働いた時間帯 割増率
法定時間内の残業 割増なし(1.00倍)
法定時間外の労働 2割5分以上(1.25倍)
深夜(午後10時〜午前5時) 2割5分以上(1.25倍)
法定時間外 かつ 深夜 5割以上(1.50倍)
法定休日の労働 3割5分以上(1.35倍)

この表は、そのまま生活の話でもあります。

深夜の時間帯に働けば、同じ1時間でも支払われる額は1.25倍です。手取りは上がる。そのかわり、平日の昼に人と会う予定は立てにくくなり、体のリズムは動きます。 どちらが良いという話ではなく、何を差し出して何を受け取るかという交換になります。

ここは、入る前に自分で決めておくところでした。 夜型が苦にならず、人の少ない時間に集中できる人にとって、深夜の席は悪くありません。逆に、朝起きて夜眠る生活が崩れると調子を崩す人には、割増賃金では埋まらない負担になります。

そしてもう1つ。データセンターの中は、非常に寒いです。 機械にとって最適な温度に保たれているからでした。行くと体調を崩す人が、実際に何人もいます。求人票には書いていませんが、毎日の話としては、割増賃金と同じくらい大きな要素です。

「IT人材79万人不足」は、未経験のあなたに向けられた数字か

よく引かれる「2030年に最大79万人不足」は、経済産業省が2019年4月に公表した試算です※7。この数字は、IT関連市場が年4.4%で伸びる高位シナリオの場合のもので、同じ資料の中位シナリオでは45万人になります。そして同じ資料は、条件によっては受託開発や保守・運用を担う人材が10万人余ると書いていました。 入口を選ぶときは、合計ではなくこちらを見ることになります。

原典の数字は、次のとおりです。すべて2030年時点、労働生産性が年0.7%上昇する前提になります※7。

シナリオ(市場の伸び) IT人材の需要 供給 差(不足)
高位(年4.4%) 192万人 113万人 79万人
中位(年2.7%) 158万人 113万人 45万人

79万人は、192万人から113万人を引いた数です【計算】。 需要のほうの伸び方をどう置くかで、45万人から79万人まで動く。数字が悪いのではなく、そういう幅を持った試算だということでした。

そして同じ資料には、もう1つの表があります。IT人材を「従来型」(受託開発、保守・運用サービスなどに従事する人材)と「先端」(IoTやAIを活用したサービスに従事する人材)に分け、従来型から先端への転換がどれだけ進むかで需給がどう変わるかを試算したものです※7。

転換の進み方 従来型IT人材 先端IT人材 合計
年2〜6%転換 18万人不足 27万人不足 45万人
年2%転換 過不足なし 45万人不足 45万人
年1%転換 10万人余る 55万人不足 45万人

転換が年1%しか進まない場合、2030年に従来型IT人材は10万人余るという試算になっていました。 合計はどの行でも45万人で変わりません。足りない場所が、行によって移動しているだけです。

未経験の入口である運用・保守は、この表では従来型のほうに入ります。つまり「不足しているから安泰」とは、この資料からは読み取れません。 読み取れるのは、入ったあとにどちらへ動くかで景色が変わるということでした。

将来の見通しそのものは、ここで扱う範囲を超えます。言えるのは1つだけです。未経験で入る会社を選ぶとき、「不足しているから大丈夫」ではなく、「この会社は、私を従来型から先端へ動かす気があるか」を見るほうが、原典に沿っています。

未経験でインフラエンジニアに入るとき、会社名より先に「現場」を聞く

インフラの仕事は、同じ会社の同じ職種名でも、配属される現場が変われば毎日が別物になります。未経験で入る人が最初に聞くべきなのは、会社名でも職種名でもなく、現場でした。 ここを聞かずに入ると、求人票どおりの会社なのに、想像と違う毎日になります。

私は派遣・SESの営業をしているので、データセンターでサーバーを構築しているエンジニアが周りに何人もいます。同じ「運用監視」という言葉でも、中でやっていることが違いました。

夜勤が暇すぎて、眠さのほうがつらい現場があります。 画面は静かで、決められた時刻に決められた確認をする。技術よりも、起きていることのほうが難しい。

常に電話が鳴っていて、待ちの人数が画面に表示されている現場もありました。 こちらはコールセンターの応対に近く、技術の話をしている時間より、人と話している時間のほうが長い。

どちらも求人票では「運用監視」です。 同じ言葉で募集され、同じ職種名で入社します。

もう1つ、長く続いている現場の話をしておきましょう。1990年代のインターネット黎明期から続く現場では、当時からいる方がノウハウを持っていることがあります。手順書に書かれていない経緯が、人に付いている。 だから、教わるにはまず関係を作るところから始まりました。これは面倒なことではなく、そこにしかない情報が残っているということです。 未経験で入るなら、むしろ近づく価値がある場所になります。

現場を聞くのは、選り好みではありません。 自分がどの毎日に耐えられるかを、入る前に知っておくためです。

インフラエンジニア未経験の面接で確かめる4つのこと

求人票からは読み取れないのに、面接で1つ聞けば分かることがあります。配属先の現場、24時間体制の組み方、資格支援の実際の使われ方、そして手順書の外へ出る道。 この4つを聞いておくと、入ったあとのずれがかなり小さくなりました。

1. 「配属される可能性のある現場は、どんなところですか」

会社の説明ではなく、現場の説明を求める質問です。答えが「お客様によります」で止まるなら、「直近1年で、未経験入社の方が配属された現場を、差し支えない範囲で教えてください」と重ねます。過去の実績は、これからの可能性より正確でした。

2. 「24時間の体制は、何人で回していますか」

すでに見たとおり、1つの席を1年埋めるには4.5人が要ります。答えの人数が席の数に対して少ないなら、その差は誰かの連勤で埋まっているはずです。 数字で聞けば、数字で返ってきます。

3. 「資格支援は、直近1年で何人が使いましたか」

制度があるかどうかではなく、使われているかどうかを聞く質問です。LinuCレベル1なら33,000円になります※5。 この額を毎年何人分も出している会社は、その資格が案件につながっている会社でした。制度の有無より、使われた回数のほうが実態を表します。

4. 「監視から構築へ移った方は、だいたい何年目でしたか」

経済産業省の試算で見たとおり、従来型から先端への転換が進むかどうかで、2030年の景色は変わります※7。この質問は、その転換が会社の中で実際に起きているかを聞くものです。 「本人次第です」という答えも、それはそれで1つの情報になります。移った人が具体的に挙がってくる会社と、挙がってこない会社では、入ったあとの数年が違いました。

この4つは、インフラに限らず形を変えて使えます。稼ぎ方の型そのものを先に押さえたい方は、業界研究とは|稼ぎ方を4つの型に分ける俯瞰図の作り方から入ると、この業界の位置が地図の上で分かるはずです。

まとめ|インフラエンジニア未経験の求人は、時間の算術から生まれている

インフラの未経験求人は、24時間の席を4.5人で埋める計算と、手順書に落ちた仕事から生まれている。

最後に、ここまで拾ってきたものを並べます。

  • 1年は8,760時間。一般労働者が1年に働くのは1,926時間※1。1つの席を埋めるには4.5人が要る【計算】
  • その4.5人の全員が経験者である必要はない。手順書に落ちた仕事は、未経験でも初日から工数として数えられる
  • 人を出す商売の売上は単価 × 稼働率。空いている席は売上ゼロなので、埋まる人は安くても価値がある
  • 監視を外に出す価格は公開されている。1ノード月4,400円から※3。だから監視はまとめられ、まとめた先に未経験の席が集まる
  • 資格支援は福利厚生ではない。入札の体制図に「所有資格」を書く欄がある※4。LinuCレベル1の33,000円※5は、会社にとって書類に書ける行の仕入れ値になる
  • 深夜(午後10時〜午前5時)の割増は2割5分以上※6。手取りが増えるかわりに、生活の時間帯が動く
  • 「2030年に79万人不足」は高位シナリオの数字で、中位なら45万人※7。同じ資料は、転換が進まない場合に従来型IT人材が10万人余るとも書いている

インフラエンジニア未経験の求人は、あなたを育てたいという気持ちから出ているのではなく、24時間を割り算した結果として出ていました。 気持ちより計算のほうが、当てにできます。計算から出た求人は、計算が続くかぎり出続けるからです。

そのうえで、入る前に決めておくことは2つだけでした。夜に働く生活を引き受けるかどうか。 そして、手順書の外へ出る道が、その会社にあるかどうか。 この2つは求人票には書いていません。聞けば答えが返ってくるので、聞くところです。

出典

Amazonのアソシエイトとして、儲けの構造は適格販売により収入を得ています。

タイトルとURLをコピーしました