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SIerとコンサルの違いは約束するもの|利益率28%と18%の差

SIerとコンサルの違いは約束するもの|利益率28%と18%の差 ITエンジニアの仕事と年収
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SIerとコンサル。求人票を並べてみると、どちらにも「上流工程」「要件定義」「顧客折衝」と書いてあって、違いがよく分からない。年収はコンサルのほうが高いと聞くけれど、何がそんなに違うのか。転職を考え始めた人が、最初につまずくところです。

先に結論を置きます。SIerとコンサルの違いは、お客さんに何を約束しているかです。 SIerは「システムを完成させる」ことを約束し、コンサルは「何をすべきかを一緒に決める」ことを約束します。約束が違うから、値段の付き方も、会社の利益の出方も、働く人の毎日も変わる。

同じ会社の中で両方をやっている例もある。野村総合研究所の2026年3月期の決算では、コンサルティング部門の営業利益率は28.0%、金融機関向けにシステムを作って動かす部門は18.3%でした※1。

ここからは、約束の違いがお金の流れにどう表れるかを、法律と決算の数字で順に見ていく構成です。SIerという業態そのものはSIerとはで、コンサルの稼ぎ方はコンサルの年収が高い理由で詳しく扱っています。

SIerとコンサルの違いは何か|「完成」を約束するか、「判断」を手伝うか

SIerは、お客さんの決めた要件に沿ってシステムを作り、完成させて引き渡すことを約束します。コンサルは、お客さんの経営や業務の課題を整理し、何をすべきかを決める手伝いを約束します。前者は成果物で、後者は判断の質で評価される仕事です。この約束の違いが、契約・値段・働き方の違いにつながります。

身近な例で考えてみます。家を建てるとき、間取りや予算を一緒に考えて「この家族にはこういう家がいい」と決めるのが設計の相談役。決まった図面どおりに家を建て、鍵を渡すまで責任を持つのが工務店です。コンサルは前者、SIerは後者に近い役回りです。

比べるところ SIer コンサル
約束するもの システムの完成と引き渡し 課題の整理と、何をすべきかの判断の手伝い
仕事の終わり システムが動き、検収が終わったとき 決めた方針が報告され、合意されたとき
主な成果物 動くシステム、設計書 報告書、計画書、会議での合意
評価の物差し 期限・予算・品質を守れたか 判断が正しく、お客さんが動けたか

ただし、境目は年々重なっています。SIerも要件定義という「決める」工程から入りますし、コンサルも「決めたことを実行する」支援まで引き受けることが増えています。野村総合研究所のコンサルティング部門も、実行支援型のコンサルティングで顧客の変革を継続的に支援すると書いています※1。

SIerとコンサルで契約の形はどう違うのか|請負と準委任

民法では、請負は「仕事を完成することを約し、その結果に対して報酬を支払う」契約です※2。委任・準委任は、事務の処理を任せる契約で、完成までは約束しません。システムを完成させるSIerの開発は請負になじみ、助言や判断の手伝いをするコンサルは準委任になじみます。

条文をそのまま引きます※2。

  • 請負(民法632条):「当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約する」
  • 委任(民法643条):「当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾する」
  • 準委任(民法656条):委任の決まりを「法律行為でない事務の委託について準用する」

請負は、完成させて初めてお金がもらえる約束です。途中で予定より手間がかかっても、完成させる責任は残ります。準委任は、決められた仕事をきちんと進めることを約束するもので、結果そのものまでは約束しません。

【推測】実際の契約は案件ごとに違い、SIerも要件定義の段階は準委任で結ぶことがあります。それでも「最後に動くシステムを渡す」役割を担う以上、SIerの仕事の中心には完成の責任があると考えられます。この責任の重さが、SIerの値段にもリスクにも表れます。

SIerとコンサルの値段はどう決まるのか|同じ「人月」でも中身が違う

どちらも「1人が1か月働くといくら」という人月で値段を出すことが多い点は同じです。PMO(プロジェクト管理の支援)を代行するコンサル会社は、月額80万〜120万円(税別)を1人月の目安として公開しています※3。違うのは、その値段で買っているもの。SIerは完成の責任、コンサルは判断を手伝う人の時間です。

コンサルの値札の実例を見ます。PMO代行を手がけるプロシアコンサルティングは、料金を自社サイトで公開しています※3。

  • 誰に:大きなシステム導入を進めたいが、進捗や課題を管理する人手が社内に足りない会社
  • いくらで:1人月 月額120万円(税別)〜。週1〜2日相当のスポット対応は月額80万円〜。目安は月額80〜120万円(税別)
  • 何を解決するか:進捗管理表や課題管理表の更新、会議の運営、議事録の作成など、プロジェクトを前に進める管理の仕事を引き受ける
  • なぜ選ばれるか:社内の人を新しく雇わずに、必要な期間だけ管理の専門家を入れられる

同じページには、費用は「支援内容、スキルレベル、稼働期間や稼働率などで決まります」と書かれています※3。完成した成果物ではなく、働く時間と人の質で値段が決まる。時間で値段が決まる型の、分かりやすい例です。

SIerの値段も人月で見積もられることが多いのですが、その先に「完成」の約束が付いています。予定より人手がかかれば、その分はSIerの持ち出しになる可能性がある。人月単価の決まり方は人月単価とはで詳しく扱っています。

SIerとコンサル、儲かりやすいのはどちらか|同じ会社の部門で比べる

野村総合研究所の2026年3月期では、コンサルティング部門の売上収益は687億円で営業利益率は28.0%、金融機関向けにシステムを作って動かす部門は4,051億円で18.3%でした※1。コンサルは利益率が高く、システム部門は規模が大きい。設備にかかるお金の差が、利益率の差の一因です。

これだけ見ると「コンサルのほうが儲かるなら、SIerの仕事は割に合わないのでは」と思う人もいるはずです。ところが、数字を並べると別の姿が見えてきます。同じ会社の中の部門なので、会社の違いを気にせずに比べられます※1。

2026年3月期(野村総合研究所) コンサルティング部門 金融ITソリューション部門
売上収益 687億円 4,051億円
営業利益 192億円 743億円
営業利益率 28.0% 18.3%
減価償却費 4億円 237億円

営業利益の額では、システム部門がコンサル部門の約3.9倍です。 利益率ではコンサルが上、利益の額ではシステムが上。どちらが儲かるかは、どの物差しで見るかで答えが変わります。

減価償却費の差も目を引きます。コンサル部門は4億円、システム部門は237億円。金融機関向けのシステム部門は、複数の金融機関が一緒に使う共同利用型のシステムなどを提供しており※1、先にお金をかけてシステムを持つ商売です。コンサルは人と知恵が中心で、設備にお金がほとんどかからない。利益率の差の一部は、この違いから来ていると考えられます。

なお、同じ会社の産業向けシステム部門は、海外子会社ののれんなどの減損で2026年3月期は営業損失でした。前の年度の営業利益率は8.8%です※1。システム部門の中でも、相手の業界や事業の形で利益率は大きく変わります。

SIerとコンサルの毎日はどう違うのか|成果物を作るか、合意を作るか

SIerの毎日は、設計書やテスト結果など形のある成果物を積み上げ、期限までに動くシステムに仕上げる仕事です。コンサルの毎日は、聞き取りと分析を重ね、お客さんの社内で「これで進める」という合意を作る仕事です。忙しさの種類が違い、どちらが楽ということはありません。

毎日の中身 SIer コンサル
多い作業 設計、開発の進捗管理、テスト、移行の準備 聞き取り、資料作り、分析、会議の進行
忙しくなる時期 テストと本番移行の前 報告会や経営会議の前
一緒に働く相手 お客さんの情報システム部門、協力会社 お客さんの経営層や事業部門
達成感が来る瞬間 システムが動き出したとき お客さんが方針を決めて動き出したとき

私は以前、形のないサービスを売る営業をしていました。商談の数ばかり追いかけていた時期は、かえって売れなくなりました。振り返ると、お客さん自身も「うちの何がどう良くなるのか」を言葉にできていないことが多かった。売る側が相手の課題を特定しないと、そもそも売る商品が決まらないのです。

コンサルの仕事の芯は、まさにここにあります。お客さんがまだ言葉にできていない課題を、一緒に言葉にする。その課題が決まったあとで、決まった形を作り上げるのがSIerの仕事です。

何を解くべきかを先に決める考え方は、イシューからはじめよ(安宅和人)が一冊まるごと扱っています。コンサルの「判断を手伝う」仕事の中身を、自分の仕事に置き換えて考える手がかりになる本です。

SIerとコンサル、年収の違いはどこから来るのか

コンサルの年収が高く見えるのは、利益率が高く、設備にお金がかからない商売だからです。ただしSIerでも、設計や取りまとめの席に座る人の年収は高く、国の統計ではシステムを設計する人の平均年収は889万円でした※4。会社の種類より、どの席に座るかで年収は大きく変わります。

コンサル会社の年収の仕組みはコンサルの年収が高い理由で扱っていますが、ひとことで言えば「人の時間を高い単価で売り、設備にお金がかからない」商売だからです。前の節で見た利益率28.0%という数字が、その形を表しています。

一方、SIerの年収は、会社の中のどの席にいるかで大きく変わります。厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、システムコンサルタント・設計者の平均年収は889万円、プログラムを作るソフトウェア作成者は579万円でした※4。詳しくはSIerの年収は席で決まるにまとめています。

コンサルに移れば年収が上がる、とは限りません。 SIerの中で設計や取りまとめの席に移る道もある。どちらに進むかは、年収より「何を約束する仕事がしたいか」で決めるほうが、入ったあとのずれは小さくて済む。

SIerとコンサル、どちらに向いているか

完成までやり切ることに達成感がある人、形のあるものを作るのが好きな人はSIerに向いています。答えのない問いを整理するのが好きな人、人の考えをまとめて合意を作るのが得意な人はコンサルに向いています。SIerからコンサルへ移る人は、要件定義やプロジェクトの取りまとめの経験が強みになります。

SIerに向いている人

  • 決まった目標に向けて、計画どおりに積み上げるのが得意な人
  • 動くシステムという形のある成果に、達成感を感じる人
  • 長い期間、同じお客さんや同じシステムと付き合いたい人

コンサルに向いている人

  • 答えが決まっていない問いを、自分で整理して進めるのが好きな人
  • 立場の違う人の意見をまとめて、1つの方針に合意させるのが得意な人
  • 数か月ごとに違うテーマに取り組むことを楽しめる人

SIerで要件定義やプロジェクトの取りまとめを経験した人なら、その経験はコンサルでも生きる。お客さんの業務を聞き取り、決めごとを文書にする力は、両方の仕事に共通する土台です。SIerから外へ移る道全体はSIerから転職で整理しています。

SIerとコンサルの違いについてよくある質問

SIerとコンサルの違いでよく聞かれるのは、ITコンサルとSIerの境目、SIerからコンサルへの転職のしやすさ、文系でも働けるかの3つです。境目は約束の中身、転職は要件定義の経験、文系かどうかより課題を言葉にする力が、それぞれの答えの中心になります。

Q. ITコンサルとSIerの境目はどこですか

「何を作るかを決める」までがITコンサル、「決まったものを作り上げる」のがSIer、と分けると分かりやすいはずです。ただし実際には、SIerも要件定義から関わり、ITコンサルも実行の支援まで担うことが増えていて、境目は重なってきている。

Q. SIerからコンサルに転職するのは難しいですか

要件定義やプロジェクトの取りまとめを経験していれば、その経験が評価の材料になる。逆に、開発の実装だけを担当してきた場合は、課題を整理して提案した経験を少しずつ積んでおくと、話せる材料が増えていく。

Q. 文系でもSIerやコンサルで働けますか

働けます。どちらの仕事でも土台になるのは、お客さんの業務や課題を聞き取って言葉にする力。技術の知識は入ってから身につけることもでき、文系か理系かより、相手の課題に関心を持てるかのほうが効いてきます。

出典

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