「SES 年収」で調べると、平均400万円台という数字がよく出てきます。でも、自分の給料がその平均より上なのか下なのか、上げるには何をすればいいのかまでは、なかなか見えてきません。
先に結論を置きます。SESの年収は、お客さんが払う単価と、そのうち本人に渡る割合(還元率)の掛け算で決まります。 経験年数で単価が上がり、会社ごとの還元率で手元に残る額が変わる。この2つを分けて見ると、平均の数字に振り回されなくなります。
私は客先常駐のSESや派遣の営業・採用として、25年近く様々な人を見てきました。その目で見た実感と、厚生労働省の統計を並べながら、年収の決まり方と上げ方を順に書いていきます。
SESの年収は実際いくら?|経験年数で見る国の統計

SESだけを集めた国の統計はありません。近いのは賃金構造基本統計調査の「ソフトウェア作成者」で、10〜99人の会社の経験0年は年293万円でした。同じ統計で、設計を担う人の経験15年以上は1,122.7万円。入口と上の方で4倍近い開きがあります。
まずは、現場で見てきた数字から。
未経験は激安300くらい。エンジニアとしてのハイスキルは1000万くらい。でもめちゃめちゃ会社による
国の統計で裏を取ってみます。厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査には、職種と経験年数ごとの給与の表があります※1。毎月の所定内給与(残業代を除いた基本の給料)の12か月分に、年間の賞与を足して年収にしました【計算】。
| 経験年数 | ソフトウェア作成者(10〜99人の会社) | ソフトウェア作成者(10人以上の会社全体) | システムコンサルタント・設計者(10人以上の会社全体) |
|---|---|---|---|
| 0年 | 293.0万円 | 371.8万円 | 515.0万円 |
| 1〜4年 | 391.5万円 | 451.3万円 | 691.3万円 |
| 5〜9年 | 478.9万円 | 533.9万円 | 781.8万円 |
| 10〜14年 | 542.8万円 | 608.1万円 | 884.4万円 |
| 15年以上 | 602.5万円 | 650.2万円 | 1,122.7万円 |
「未経験は300くらい」は、小さな会社の経験0年の293.0万円とほぼ重なります。「ハイスキルは1000万くらい」は、設計者の経験15年以上の1,122.7万円に近い数字です。
注意点は2つ。1つは、この統計がSESに限った数字ではないこと。自社開発の会社や、事業会社の中で働くエンジニアも入っています。もう1つは、残業代が入っていないこと。実際の年収は、ここに残業代が上乗せされます。
それでも、経験年数でどこまで伸びるかの目安としては十分に使える数字です。作る仕事のままだと15年たっても600万円台。設計の仕事に移ると1,000万円台が見えてくる。この差が、後で書く「上げ方」の話につながります。席による年収の差はSIerの年収は席で決まるでも詳しく扱いました。
SESの年収はどう決まる?|単価×還元率のしくみ

SESの給料の元は、お客さんがエンジニア1人に毎月払う単価です。その単価から会社の取り分を引いた残りが、本人の給料や社会保険料に回ります。本人に回る割合が還元率。単価が同じでも、還元率が60%か85%かで年収は大きく変わります。
お金の流れを、買う側と働く側の両方から見てみます。
買う側は、なぜ単価を払うのか
お客さんの会社がSESに毎月お金を払うのは、必要なときに、必要な人数だけ、技術のある人を足せるからです。自社で採用すれば、求人広告を出し、面接をし、教育をして、仕事が減っても雇い続けることになります。SESなら、プロジェクトが終われば契約を終えられる。単価の中には、その身軽さの代金も含まれています。
働く側には、どう渡るのか
仮の数字で計算してみます【計算例】。
| お客さんが払う単価(月) | 還元率 | 本人に回る額(月) | 年間 |
|---|---|---|---|
| 60万円 | 60% | 36万円 | 432万円 |
| 60万円 | 85% | 51万円 | 612万円 |
同じ60万円の単価で、年180万円の差が出ます。「めちゃめちゃ会社による」の中身の多くは、この還元率の違いです。
単価そのものの決まり方は人月単価とはで、間に会社が何社も挟まる構造は多重下請け構造とはで扱っています。商流が深くなるほど、上の会社が先に取り分を取るので、自分の会社に届く単価が下がっていきます。
SESの還元率は何%?|IT系の派遣で約6割、多いところで85%
SESの還元率を国が集計した数字はありません。手がかりは派遣の統計で、IT系の派遣では、お客さんが払う料金のうち61.2%が本人の賃金でした。消費税を除くと67.3%です。現場の感覚でも、多くの会社は60%前後、多いところで85%ほどでした。
現場で見てきた答えです。
60%くらい。多いとこは85%くらい。
厚生労働省の派遣事業報告によると、令和6年度の「情報処理・通信技術者」の派遣料金は1日8時間で34,382円、派遣で働く人の賃金は21,032円でした※2。
| 項目 | 金額(8時間あたり) |
|---|---|
| お客さんが払う派遣料金(消費税込み) | 34,382円 |
| 同じ料金から消費税を除いた額 | 31,256円【計算】 |
| 派遣で働く人の賃金 | 21,032円 |
| 賃金 ÷ 料金(税込み) | 61.2%【計算】 |
| 賃金 ÷ 料金(税抜き) | 67.3%【計算】 |
派遣とSESは契約の種類が違います(違いは客先常駐と派遣の違いで整理しました)。それでも、お客さんの会社に人を出してお金を受け取るという形は同じなので、相場の目安としては近いところを指しています。
還元率が100%にならない理由
残りの3〜4割が、すべて会社の利益になるわけではありません。派遣会社の営業として長く働いてきて、利益が薄くなる場面を何度も見てきました。
- 社会保険料の会社負担:本人の分とは別に、会社が保険料を払う
- 有給休暇:休んだ日はお客さんに請求できないのに、本人には給料を払う。しかも有給の日数は毎年増える
- 求人広告費:人を集めるたびに費用がかかる
- 待機:次の現場が決まるまでのあいだも、正社員なら給料は出る
社会保険料も有給も、働く本人にとっては当然の権利です。ただ、その費用を誰が負担しているかは本人から見えにくい。還元率の数字を見るときは、分母と分子に何が入っているかまで確かめる必要があります。
SESの還元率は、どこで確かめられる?|マージン率の公開と、数字の見せ方
派遣の許可を持つ会社には、マージン率を公開する義務があります。派遣法23条5項で決まっていて、全国の事業所の77.5%がインターネットで公開していました。ただしSES(準委任)の契約は対象外です。会社が自分で出す「還元率」は、計算の仕方まで聞いて確かめます。
現場で見てきたことを、言葉のまま置きます。
派遣のマージン率公開でわかる会社もあれば、会社負担の原価を載せて騙す企業もあるので注意。
マージン率の公開は法律の義務
労働者派遣法23条5項は、派遣会社に、事業所ごとの「労働者派遣に関する料金の額の平均額から派遣労働者の賃金の額の平均額を控除した額を当該労働者派遣に関する料金の額の平均額で除して得た割合」などの情報提供を義務づけています※3。これがマージン率です。厚生労働省の集計では、インターネットで公開している事業所は33,942所で、報告を出した事業所の77.5%でした※2。
SESの会社でも、派遣の許可を持っていれば、派遣の部分のマージン率は公開されています。会社名と「マージン率」で調べると、会社のホームページや厚生労働省の「人材サービス総合サイト」で見つかることがあります。SESの準委任の部分は公開の義務がないので、SESはやめとけと言われる理由で書いたとおり、外からは見えにくいままです。
「還元率」の数字に何が入っているか
会社が求人票や面接で出す「還元率◯%」は、法律で計算の仕方が決まっている数字ではありません。たとえば、会社が負担する社会保険料を「本人に還元したお金」に含めて計算すると、同じ給料でも還元率は高く見えます。
仮の数字で試算してみます【計算例】。厚生年金の保険料率は18.3%で、会社と本人が半分ずつ負担します※4。
| 計算の仕方 | 本人に回る額(月) | 還元率 |
|---|---|---|
| 給料だけで計算 | 36万円 | 60.0% |
| 会社負担の厚生年金(9.15%)を足して計算 | 39万2,940円 | 65.5% |
健康保険や雇用保険の会社負担まで足せば、数字はさらに上がります。給料は1円も変わっていないのに、です。
面接で還元率を聞いたら、続けて「その還元率に、会社負担の社会保険料は入っていますか」と聞いてみてください。きちんと答えてくれる会社ほど、数字に自信を持っています。
裁判になった例もある
また、裁判になっているスキルシート詐称しなければスクール料金払えという誓約書書かされたり闇もある
報道された裁判を1つ挙げます。SES会社の元社員3人が、経歴を偽ったスキルシートを作るよう命じられ、会社が運営するプログラミングスクールの受講料も払わされたとして、経営者2人を訴えました。東京高裁は2025年2月6日、経営者側に約769万円の賠償を命じています。一審の東京地裁(2024年7月19日)は総額550万円超の賠償を命じていました※5。
この件では、求人広告に「未経験からSEになれる」「未経験でも給料30万円以上」と書かれていたと報じられています※5。未経験の入口で相場を大きく上回る給料をうたう求人は、中身を一度立ち止まって確かめたほうがいい。国の統計では、小さな会社の経験0年は年293.0万円でした※1。
SESで年収が上がる人と上がらない人の違いは?
上がっていく人は、技術が分からない本社の人にも伝わる成果を出しています。お客さんからの単価が上がった、会社が勧める資格を取った、といった分かりやすい形です。上がらない人に共通していたのは、勤怠の悪さでした。
25年近く見てきた答えはこうです。
技術がわからない本社の人間でもわかりやすい成果。お客さんの単価が上がるとか言われてた資格を取るとか。上がらない人は勤怠が悪い
SESのエンジニアは、ふだんお客さんの会社で働いています。給料を決める自分の会社の人は、毎日の仕事ぶりを見ていません。だから評価は、外から見える成果で決まりやすくなります。
| 本社から見える成果 | なぜ給料につながるのか |
|---|---|
| お客さんからの単価が上がった | 会社に入るお金が増え、配れる額が増える |
| 会社が勧める資格を取った | 次の現場の単価交渉の材料になる |
| 遅刻や急な休みがない | お客さんからの評判が、そのまま契約の継続になる |
勤怠が評価を大きく左右するのも、同じ理由です。お客さんの会社は、技術だけでなく「毎日きちんと来てくれるか」を見ています。休みがちな人がいると、単価を上げる交渉どころか、契約の更新そのものが危うくなる。営業の側から見ると、技術の高さよりも先に効いてくる項目でした。
SESの年収を面接で聞くとき、何を確かめる?
候補者の多くは、総支給額と年収、社会保険、交通費の違いを分けないまま、だいたいの金額を答えています。月の総支給額なのか、賞与込みの年収なのか、交通費が別に出るのかで、同じ「300万円」でも中身が変わります。面接の前に、自分の数字を4つに分けておきます。
採用の面接で何度も見てきた場面です。
総支給額、年収、社会保険、交通費の有無などわかっていないで大体の金額を言っている
面接で「今の年収はいくらですか」と聞かれて、手取りの月額を12倍した数字を答える人がいます。会社が知りたいのは、ふつうは税金や社会保険料が引かれる前の額面です。ここがずれると、自分の価値を低く伝えてしまいます。
| 言葉 | 中身 | 確かめるところ |
|---|---|---|
| 総支給額 | 税金や社会保険料を引く前の、毎月の支給額 | 給与明細の「総支給額」の欄 |
| 年収 | 1年分の総支給額に賞与を足した額 | 源泉徴収票の「支払金額」の欄 |
| 社会保険 | 厚生年金・健康保険など。本人負担分は給料から引かれる | 給与明細の控除の欄 |
| 交通費 | 給料に含むのか、別に出るのか、上限はあるのか | 求人票と雇用契約書 |
厚生年金だけでも、本人は額面の9.15%を負担しています※4。さらに交通費が「給料に含む」の会社と「別に全額支給」の会社では、同じ額面でも実際に使えるお金が違います。
面接で聞くと話が早い4つの質問

- 提示額は、賞与込みの年収ですか、月給の12倍ですか
- 交通費は、提示額とは別に出ますか
- 残業代は、提示額に含まれていますか
- 還元率を出しているなら、会社負担の社会保険料は入っていますか
4つめは前の節で書いたとおりです。答えをメモに残しておけば、複数の会社を同じ物差しで比べられます。
SESの年収を上げる道は?|資格、成果、自分のサービス
SESの年収を上げる道は、大きく3つあります。本社に伝わる成果と資格で単価を上げる、還元率の高い会社や設計の仕事へ移る、そしてSESの外に出て自分でサービスを作る。最後の道は、25年近くこの業界を見てきた私がいちばん伝えたいことです。
道1:資格で、本社にも伝わる形を作る
20代で現場の経験がまだ少ない人にとって、手の届きやすい実例が、情報処理推進機構(IPA)の国家試験です※6。
- 誰に:技術の中身を知らない本社の人や、次の現場の担当者に、力を説明したい人
- いくらで:受験手数料7,500円(税込)※6
- 何を解決するか:「何ができる人か」を、同じ物差しで示せる
- なぜ選ばれるか:国家試験で、合格者には経済産業大臣の名前で合格証書が出る※6。会社の外でも通じる
まずは基本情報技術者試験、その先に設計の仕事に近い試験があります。統計の表で見たとおり、設計の仕事に移ると年収の伸び方が変わります。
道2:会社と仕事の中身を選び直す
同じ単価でも、還元率が60%と85%なら年収は年180万円違いました。マージン率の公開や、面接での4つの質問で会社を比べる。SESから別の働き方へ移る道筋はSESから転職で整理しています。
道3:自分でサービスを作って出す
給料を上げたいSESエンジニアに1つだけ言うなら、という質問への答えです。
SESはやめとけ。自分でサービス作ってリリースすれば?
SESの年収には、単価と還元率という2つの天井があります。どれだけ頑張っても、お客さんが払う単価を超えて給料が出ることはありません。自分でサービスを作って世に出せば、その天井の外側で稼ぐ道が開けます。
いきなり会社を辞める必要はありません。現場で身につけた技術で、小さなWebサービスやアプリを1つ作って公開してみる。作ったあとに何をすればいいか分からない人には、個人開発のためのWebサービス公開マニュアルが、開発のあとの公開や運営の手順を扱っています。作って出した経験は、それ自体が「本社にも伝わる成果」になり、転職の面接でも話せる材料になります。
SESの年収でよくある質問
Q. SESの平均年収はいくらですか
SESだけを集めた国の統計はありません。近い職種の「ソフトウェア作成者」は、10人以上の会社全体で年537.7万円でした(残業代を除く)※1。経験0年では371.8万円、10〜99人の会社の経験0年では293.0万円です。
Q. SESの還元率の平均は何%ですか
国の集計はありません。目安になるのはIT系の派遣で、料金に対する賃金の割合は消費税込みで61.2%、税抜きで67.3%でした※2。現場の感覚でも60%前後、多いところで85%ほどです。
Q. SESで年収1,000万円は届きますか
届く人はいます。国の統計では、システムコンサルタント・設計者の経験15年以上が年1,122.7万円でした※1。作る仕事のままだと、経験15年以上でも650.2万円。設計の仕事に移れるかどうかが分かれ目です。
まとめ|SESの年収は、単価と還元率の掛け算


- 相場:国の統計で、小さな会社の経験0年は293.0万円、設計者の経験15年以上は1,122.7万円※1
- 決まり方:お客さんが払う単価 × 本人に回る割合(還元率)。単価60万円なら、還元率60%と85%で年180万円の差
- 還元率の目安:IT系の派遣で、料金に対する賃金は税込み61.2%・税抜き67.3%※2
- 確かめ方:派遣のマージン率は法律で公開の義務がある※3。会社の「還元率」は、会社負担の社会保険料が入っているかを聞く
- 上がる人:本社にも伝わる成果(単価アップ・資格)を出す人。上がらない人は勤怠が悪い
- 上げる道:資格と成果、会社と仕事の選び直し、そして自分でサービスを作って出すこと
平均の数字と見比べて落ち込む前に、自分の単価と還元率を1つずつ確かめてみてください。どちらを動かせば年収が上がるのかが、そこで見えてきます。
出典
- ※1 令和7年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 第14表(職種・性・経験年数階級別)(厚生労働省・e-Stat)
- ※2 令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)(厚生労働省・2026年3月)
- ※3 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(第23条)(e-Gov法令検索・デジタル庁)
- ※4 厚生年金保険料額表(日本年金機構)
- ※5 「この業界では当たり前だ」未経験社員に経験詐称を指示…SES企業の経営者らに約769万円の賠償命令 東京高裁(弁護士JPニュース・2025年2月7日)
- ※6 スケジュール、手数料など(独立行政法人情報処理推進機構)
Amazonのアソシエイトとして、儲けの構造は適格販売により収入を得ています。

