業界研究とは?会社の「稼ぎ方」を4つの型に分けて見ることです
業界研究とは、その業界がどうやってお金を得ているかを調べる作業です。事業内容を暗記することではありません。誰が払い、いつ払い、値段を誰が決めるのか。この3点で業界を並べると、まったく違う業種が同じ型に入り、似た業種が別の型に分かれます。
就職や転職の準備で「業界研究をしなさい」と言われても、何をどこまで調べれば終わりなのかが分かりません。企業のホームページを開いて、沿革と事業内容を読んだところで、手が止まってしまう。
読んでも身につかないのは、覚える作業になっているからです。会社の数だけ暗記していては、いくら時間があっても足りません。
やることは1つです。業界を「稼ぎ方」で分類して、一枚の表に並べること。これを俯瞰図と呼びました。作り方を、そのまま書きます。
業界研究のやり方3ステップ|俯瞰図の作り方
俯瞰図は、縦に業界を並べ、横に「誰が払うか」「いつ払うか」「値段を誰が決めるか」の3列を置くだけで作れます。この3列が埋まれば、その業界で働く人が毎日何をするのかまで見えてきました。会社ごとに作る必要はありません。業界ごとで足ります。
ステップ1:誰が払っているかを書く
サービスを使う人が払っているのか、別の誰かが払っているのか。ここがずれている業界は、必ず分かりにくくなります。
病院がその代表です。診察を受けるのは患者ですが、窓口で払うのは費用の一部だけで、残りは健康保険から病院へ渡ります。健康保険法の第七十四条に、負担する割合が定められています。
七十歳に達する日の属する月以前である場合 百分の三十
つまり、患者が払うのは3割。残りの7割は保険から入ります。1万円の医療費なら、患者が3,000円、保険から7,000円。「お客さんが2人いる」構造です。
ステップ2:いつ払うかを書く
買うとき1回きりか、毎月続くか。ここで仕事の中身が変わりました。
- 1回きり(不動産の売買仲介、アパレル)… 新しいお客さんを探し続ける
- 毎月続く(塾、通信、サブスク)… やめない理由を渡し続ける
同じ「営業職」でも、この2つはまったく別の毎日になります。
ステップ3:値段を誰が決めるかを書く
ここが3列でいちばん効きました。詳しくは、次の章で。
4つの型で業界を並べる【業界研究の俯瞰図】
稼ぎ方を大きく分けると、モノを売る型・使わせ続ける型・つなぐ型・貸す型の4つになります。この4つに業界を放り込むと、アパレルと花屋が同じ場所に、不動産仲介と人材紹介が同じ場所に並びます。業種名ではなく、お金の入り口で見るからです。
| 型 | お金の入り口 | 入る業界 | 働く人の一日 |
|---|---|---|---|
| 売る | 買うとき1回 | アパレル、花屋、飲食、メーカー | 新しい客を探す |
| 使わせ続ける | 毎月・毎年 | 塾、通信、SaaS、ジム | やめない理由を渡す |
| つなぐ | 取引が決まったとき | 不動産仲介、人材紹介、派遣、商社 | 両側の話をまとめる |
| 貸す | 借りている間ずっと | 銀行、リース、質屋、不動産賃貸 | 返ってくるかを見極める |
業種名で覚えると数十個になりますが、型で覚えると4つです。初めて聞く会社でも、この4つのどこに入るかを考えれば、仕事の中身が想像できます。
型ごとの実例と、そこで何が起きるかは儲かる仕組みの一覧にまとめました。
俯瞰図でいちばん効くのは「値段を誰が決めるか」の列
値段を自分で決められる業界と、国が決めている業界があります。この差が、働き方をいちばん大きく変えます。決められる業界は提案の腕で結果が動き、決められない業界は量と効率の設計で差が付きます。求人票では絶対に分からない部分です。
国が決めている業界の例
病院や薬局は、治療や薬の値段が決まっています。同じことをすれば、どこでも受け取る額はほぼ同じです。
不動産の仲介も、受け取れる上限が決まっています。宅地建物取引業法の第四十六条で「国土交通大臣の定めるところによる」とされ、告示で料率が示されています。
| 取引価格のうち | 受け取れる割合(消費税込み) |
|---|---|
| 200万円以下の部分 | 5.5% |
| 200万円超400万円以下の部分 | 4.4% |
| 400万円を超える部分 | 3.3% |
出どころ:e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」第四十六条/国土交通省「宅地建物取引業者が受けることができる報酬の額」(建設省告示第1552号、令和6年6月21日改正)
3,000万円の家なら、受け取れるのは105万6,000円が上限です。どれだけ丁寧に対応しても、この線を超えられません。
自分で決められる業界の例
アパレル、保険、投資用不動産、SaaS。ここは提案の仕方で金額が動きます。
上限が無いということは、腕がそのまま数字に出るということでした。同時に、数字が出ない時期も自分の責任として返ってきます。
この列が、向き不向きを分けます
| 値段が決まっている業界 | 自分で決められる業界 | |
|---|---|---|
| 評価されること | 量と効率を設計する力 | 提案して納得してもらう力 |
| 収入の形 | 安定しやすい | 波が出やすい |
| 合いやすい人 | 仕組みを作るのが好き | 人と話して決めるのが好き |
業界研究とは、実は自分の向き不向きを知る作業でした
私は転職の相談を受けてきましたが、辞めていく人には共通する様子がありました。
- 表情と目線に覇気がない
- みんなができることが自分だけできない、と自分を責めている
- 長く話したあと、急に「わかりました、頑張ります」と言う
3つ目は、納得したのではありません。その場を終わらせたくて言っています。
多いのは2つ目でした。そして話を聞いていくと、その人だけができないのではなく、仕組みを教えられていないだけのことがほとんどでした。
値段を自分で決められる業界に入った人が、決められない業界のやり方で頑張っていた。あるいはその逆。本人の能力ではなく、型と自分の相性の問題だったということが、何度もありました。
業界研究に必要なのは、励ましではなく説明です。4つの型のどこにいるのかが分かると、「自分だけできない」と思うところから抜けられます。
業界研究で見落としがちな、求人票に書いていない3つ
求人票には、給与・仕事内容・勤務地は書いてありますが、稼ぎ方は書いてありません。誰が払うのか、上限があるのか、成果が出るまで何か月かかるのか。この3つは自分で調べる必要があります。調べ方も含めて並べます。
1. 本当の顧客は誰か
無料で使えるサービスを扱う会社なら、「では誰が払っているのか」まで必ず調べること。広告主が払っている会社では、あなたが向き合う相手は、利用者ではなく広告主。
2. 受け取れる金額に上限があるか
法律や告示で上限が決まっている業界かどうか。「◯◯業 報酬 告示」「◯◯法 手数料」で検索すれば、たいてい出てきました。
3. 成果が出るまで何か月かかるか
1回きりの取引を扱う業界ほど、成果が出るまでの時間が読みにくくなります。ここを知らずに入ると、3か月で「向いていない」と判断してしまいます。
面接では、こう聞けるはずです。
「入社した方が、最初の成果を出すまでにかかる期間の平均はどれくらいですか」
答えにくい質問ではありません。それでも、聞く人はほとんどいません。
まとめ:業界研究とは、4つの型に並べて自分の居場所を探すこと
やることは3つでした。
- 誰が払っているかを書く(利用者か、別の誰かか)
- いつ払うかを書く(1回か、毎月か)
- 値段を誰が決めるかを書く(国か、自社か)
そして業界を、売る・使わせ続ける・つなぐ・貸すの4つに放り込む。業種名を暗記するより、この4つを覚えるほうが、はるかに長く使えます。
会社は毎年変わりますが、お金の入り口はそう簡単に変わりません。一度この見方を身につければ、次の転職でも、その次でも使えます。
業種ごとの具体的な稼ぎ方は、儲かる仕組みの一覧で1つずつ見ていけます。

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