コンサルの年収が高い理由|売上が人の時間からしか生まれないから
コンサルの年収が高いのは、売上が人の時間からしか生まれない商売だからです。工場も在庫も持たないので、入ってきたお金の行き先が人件費に集中します。ある上場コンサル会社の決算書では、社員1人あたり2,000万円前後という数字が出てきます。年収は、そこから逆算されたものです。
「コンサルは年収が高い」という話は、転職を考えるときに必ず出てきます。ただ、そのお金がどこから来ているのかまで書いてある記事は、あまり見かけません。
役職ごとの相場表や、ファーム別のランキングなら、検索すればいくらでも出てきます。でも本当に知りたいのは、その金額を会社がどうやって払えているのかのほう。そこが分かれば、入ったあとに何をやることになるのかも一緒に見えてくるはずです。
今回は、実際に公開されている決算書の数字だけを使って、コンサルの稼ぎ方をたどります。
コンサルの儲かる仕組みは3つの掛け算|単価×稼働率×人数
コンサルの売上は、1人あたりの単価と、稼働率と、人数の掛け算で決まります。3つのうちどれかがゼロになれば、その分の売上はゼロ。工場のように在庫を積んで待つことができないため、この3つを高いところで保ち続けることが、そのままこの商売の中身です。
順番に見ます。
- 単価… コンサルタント1人を1か月貸すと、いくら請求するか
- 稼働率… いま、何人が実際に案件に入っているか
- 人数… 貸せる人が何人いるか
稼働率とは、いま何人が案件に入っているかの割合
この「稼働率」という言葉、私が勝手に持ち出したものではありません。コンサル会社が自分で、投資家向けの書類にはっきり書いています。
安定した稼働率(ある時点におけるコンサルタント全数のうち、プロジェクトに参画している人数の割合)を維持することが重要である※1
会社の側が「ここが要だ」と名指ししている数字。ここを押さえれば、年収の話はほとんど解けます。
たとえば100人いて、80人が案件に入っていれば稼働率は80%。残りの20人は、給料は出ていくのに請求先がない状態です。1か月まるまる空いた人が1人いれば、その月の単価ぶんがそのまま消えます。
在庫も工場もいらない。お金は、ほとんど人にしか出ていかない
もうひとつ、同じ書類にこう書いてあります。
事業活動における運転資金需要の主なものは、当社グループコンサルタントの人件費であります※1
製造業なら、工場を建て、機械を入れ、材料を仕入れて、在庫を置く場所も要ります。コンサルにはそれがない。お金の出口が、ほぼ人件費だけ。
だから、稼ぎが増えたときに配れる先も人しかありません。儲かる仕組みの一覧で並べた10業種と比べても、ここまで一本道の商売は多くありません。
実例|コンサル会社の決算書で、1人あたりいくら売っているかを数える
ベイカレント(東証プライム上場)の2025年2月期は、売上収益116,056百万円、期末の従業員数5,467名でした※1。単純に割ると、社員1人あたり約2,123万円。同じ計算を5期分やってみると、この数字がほとんど動いていないことが分かります。
ここまでは仕組みの話。実際の数字で見たほうが、ずっと早く腹に落ちます。
使うのは、金融庁のEDINETで誰でも読める有価証券報告書です。会社が「こういう会社です」と国に届け出た書類なので、転職サイトの推計値より確かなもの。
電卓を叩いてみる
| 決算期 | 売上収益 | 従業員数 | 1人あたり |
|---|---|---|---|
| 2021年2月期 | 428億円 | 2,161名 | 約1,984万円 |
| 2022年2月期 | 576億円 | 2,638名 | 約2,185万円 |
| 2023年2月期 | 760億円 | 3,310名 | 約2,299万円 |
| 2024年2月期 | 939億円 | 4,321名 | 約2,173万円 |
| 2025年2月期 | 1,160億円 | 5,467名 | 約2,123万円 |
売上は5年で2.7倍。ところが1人あたりは、ずっと2,000万円台の前半のままです。
ここが、この商売のいちばん正直なところ。売上を倍にしたければ、人を倍にするしかない。機械を入れて生産性を上げる、という逃げ道がありません。
実際、この会社の従業員は1年で4,321名から5,467名へ、1,146名増えています※1。ならすと月に約95人。毎月、学校のクラス3つぶんの人が新しく入っている計算です。
月額に直すと、1人あたり2,123万円 ÷ 12か月で約177万円。4人のチームが3か月のプロジェクトに入れば、それだけで2,000万円を超える規模になります。プロジェクト1本の金額が大きく見えるのは、人数と月数を掛けているからでした。
ひとつ断っておくと、この5,467名にはコンサルタント以外の社員も含まれます。案件に出ている人だけで割り直せば、1人あたりはこれより大きくなります。ここでは、誰でも同じ数字にたどり着ける割り方を選びました。
あわせて、ここで使ったのは1社の数字です。コンサルと呼ばれる会社には、戦略に絞ったところ、会計事務所から伸びたところ、システム開発に近いところとさまざまな形があり、単価も稼働率の作り方も一律ではありません。それでも「人を貸して、月ごとに請求する」という骨格は共通しています。数字を開示している上場企業は、その骨格を外から確かめられる数少ない窓口です。
売上原価から、給料の原資を逆算する
同じ決算書には、費用の内訳も出ています。
売上収益 116,056百万円/売上原価 53,601百万円/販売費及び一般管理費 19,845百万円/営業利益 42,615百万円※1
売上原価53,601百万円を5,467名で割ると、1人あたり約980万円。有価証券報告書は売上原価の内訳までは載せていませんが、運転資金の主なものが人件費だと会社自身が書いている以上、ここの大半は人に払われたお金です。
つまり、こういう並びになります。
1人が売る … 約2,123万円
そのうち原価に乗る … 約980万円
残り … 約1,142万円(会社の運営費と利益)
残りの約1,142万円が、そのまま利益になるわけではありません。ここから本社の運営費(販売費及び一般管理費)が出ていきます。それが1人あたり約363万円。差し引いて残る約780万円が営業利益です。
年収1,000万円台という数字は、この並びから出てきます。2,000万円を売る人に1,000万円払い、本社の運営費を払って、それでも780万円が残る。この形が成り立っているから、高い給料を提示できます。
売上に対する営業利益は36.7%。売上の3分の1以上が利益として残る形です。
発注する側は、なぜ2,000万円を出すのか
ここまでは売る側の話。買う側の理屈も見ておかないと、この金額の意味はつかめません。
同じ仕事を自社でやろうとすると、まず人を採るところから始まります。求人を出し、選び、入ってもらい、育てる。ここまでで半年から1年。しかも、その人はプロジェクトが終わったあとも社員として残り続けます。
コンサルに頼めば、来月から4人が動き、3か月で終わればそこで費用も止まる。固定費にならない専門家を、必要な期間だけ借りる形です。
だから、発注する側の判断はこうなります。この3か月で決めたいことが、2,000万円より大きい金額を左右するかどうか。工場の建て替えや、基幹システムの入れ替えなら、動く金額の桁がひとつ違ってきます。その意思決定を3か月早められるなら、それだけで元が取れる場面があるわけです。
逆に言えば、決めることの金額が小さい場面では、この値段は合いません。コンサルが使われるのは、決断そのものが重い場所に限られます。
コンサルの平均年収は1,349万円|全国平均の2.8倍になる理由
ベイカレントの有価証券報告書に載っている平均年間給与は13,497,765円、平均年齢31.2歳です※1。国税庁の調査による給与所得者の平均給与は478万円※2なので、約2.8倍。ただし年齢と勤続年数の欄を一緒に読むと、この数字の意味は少し変わります。
まず、比べる相手をはっきりさせます。
| ベイカレント※1 | 全国平均※2 | |
|---|---|---|
| 平均給与 | 1,349万円 | 478万円 |
| 平均年齢 | 31.2歳 | 47.2歳 |
| 平均勤続年数 | 4.0年 | 12.6年 |
この平均給与の欄が対象にしているのは、提出会社である株式会社ベイカレントの593名。グループ全体の5,467名の数字ではありません。そこは正確に押さえておきます。
1,349万円と聞くと、自分とは別の世界の話に見えます。ただ、さきほどの「1人が約2,123万円を売る」と並べてみると、そこまで飛んだ金額ではありません。売った額のおよそ6割が、本人に戻っている形です。数えている集団は違うので、あくまで目安の比較として。
高いのは「取り合いになっているから」と、会社自身が書いている
なぜここまで払えるのか。理由も同じ書類に書いてありました。
コンサルティングニーズの増大に伴い、業界内での人材争奪戦が激化し、経験者採用に係る費用、人件費は高騰する傾向にあります※1
会社が投資家に向けて「人の取り合いになっていて、採用にお金がかかる」と申告している。年収が高い理由として、これ以上はっきりした一次情報はそうありません。
そして、さきほどの構造と噛み合います。人を増やさないと売上が増えない商売で、同じ業界の会社が同時に人を増やそうとしている。取り合いになれば、値段は上がる。単純な話でした。
平均年齢31.2歳、平均勤続4.0年という数字も一緒に載っている
ここは誤解されやすいところなので、丁寧に書きます。
勤続年数の平均が4.0年と短いのは、会社が急に大きくなっていることの裏返しです。1年で1,000人以上増えれば、社歴1年未満の人が分母にどっと入ります。平均が下がるのは当たり前。
ただ、そこで働く側から見ると、意味はもうひとつあります。まわりの5人に1人は、この1年で入った人。先輩の背中を何年も見て覚える形の職場とは、育ち方が別物です。
これを「若いうちに任せてもらえる」と読むか、「教わりながら進めたいのに」と読むかで、向き不向きが分かれます。
働く側から見ると、コンサルの毎日はどうなるのか
コンサルの現場は、自分が案件に入っているかどうかで景色が変わる仕事です。入っていれば納期に追われ、入っていなければ次のアサインを探すことになる。稼働率という会社の指標が、そのまま個人の1日の過ごし方に降りてきます。
私は個人事業主になったとき、これに近いものを体で覚えました。
会社員だったころ、お金のもらい方をバイトの時給の感覚で捉えていました。1時間そこにいれば、お金がもらえる。恥ずかしながら、その感覚。
その後、フルコミッション(完全歩合。売れた分だけ収入になる形)で働いてみて、初めて分かりました。自分の売上が悪くても毎月決まった給料が入ることが、どれだけありがたいか。
コンサル会社の社員は、フルコミッションではありません。案件が途切れた月も給料は出ます。その空白を会社がかぶってくれている。稼働率を会社が必死で見ているのは、そのかぶるぶんが直接利益を削るからです。
私の経歴のほとんどは、人材派遣の営業です。派遣も、人を貸して月ごとに請求する形は同じ。派遣会社のマージン率の記事に書いたとおり、働いていない時間の費用を誰が持つのかが、そのまま会社の利益を決めます。コンサルの稼働率は、それと同じ話を別の名前で呼んでいるだけでした。
だから、入る前に確かめる価値があるのはこの1点。案件と案件のあいだ、自分は何をして過ごすことになるのか。研修に充てる会社もあれば、提案書づくりに入る会社もあります。ここの過ごし方が、その会社の性格をよく表します。
コンサルに向いてる人・向いてない人の特徴
コンサルに向いているのは、初めての分野を短期間で人に説明できるところまで持っていける人です。逆に、ひとつの製品や顧客をじっくり育てたい人には、案件が変わるたびの切り替えが負担になります。頭の良さより、切り替えの速さで分かれます。
向いてる人
- 知らない業界を短期間で調べ切れる… 3か月で、その業界の人と話が通じる状態まで持っていく
- 人に説明する形に整えるのが好き… 分かったことを、決める人が読める形にする仕事
- 相手の社内政治ごと引き受けられる… 正しい案が、そのまま通るとは限らない
- 環境が変わることを面白がれる… 客先も、テーマも、チームも定期的に入れ替わる
向いてない人
- ひとつのものを長く育てたい… 引き継いだ先の成果は、自分の手を離れます
- 自分の裁量だけで進めたい… 決めるのはあくまで客先。提案する側です
- 成果物より過程を見てほしい… 評価されるのは、出したものと稼働の実績
どちらが優れているという話ではありません。合わない場所で頑張り続けるほうが、消耗します。
面接で聞くなら、年収の額より先にこの1問
年収レンジを聞くより、先に効く質問があります。
「御社の稼働率は、いまどれくらいですか。案件が空いた期間、社員は何をして過ごしますか」
この質問ができる人は、まず落ちません。会社が何で立っているかを、自分で読もうとした証拠になるからです。
そして、返ってきた答えでその会社の実像がかなり見えます。数字がすぐ出てくるなら、社内で共有されている指標だということ。空いた期間の過ごし方に具体的な答えがあるなら、そこに投資している会社だということ。業界研究の俯瞰図で言えば、同じ「人を貸す型」の中でも会社ごとの差が出るのがここです。
まとめ:コンサルの年収は、単価と稼働率の掛け算から出ている
数字だけ並べ直します。
- 1人あたりの売上… 約2,123万円(2025年2月期・期末人数で割った概算)
- そのうち原価… 約980万円
- 平均年間給与… 1,349万円(提出会社593名・平均年齢31.2歳)
- 全国平均… 478万円
そして、5年ぶんの表が教えてくれたことがひとつ。1人あたりの売上は、ほとんど動かない。会社が伸びた分は、まるごと人が増えた分でした。
だから採用にお金をかけ、取り合いになり、年収が上がる。コンサルの高い年収は、人を集められるかどうかの競争が生んだ数字です。
入る側から見れば、確かめるところもはっきりします。単価が高い理由は何か。稼働率はどう保たれているか。空いた期間はどう扱われるか。年収の額そのものより、この3つのほうが、入ったあとの毎日を決めます。
他の業界がどこで稼いでいるかと並べると、コンサルの特殊さがはっきりします。主な型をひととおり並べたのが儲かる仕組みの一覧、同じ「年収が高い理由」を金融で追ったのが銀行員の年収が高い理由です。
出典
- ※1 株式会社ベイカレント 有価証券報告書(第11期・2025年2月期)(金融庁 EDINET、2025年5月28日提出)
- ※2 令和6年分 民間給与実態統計調査(国税庁)

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