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社内SEの年収はどこから出るのか|昇給4.1%と昇格69.1%を分ける等級表

社内SEの年収はどこから出るのか|昇給4.1%と昇格69.1%を分ける等級表 ITエンジニアの仕事と年収
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社内SEの求人を開くと、年収の欄に「400万〜700万円」のような幅が書いてあります。この幅は、応募する人の実力の幅ではありません。 その会社の等級表の、どの段からどの段までを見せているかの幅です。

社内SEは、売上を作らない部署にいます。それでも毎月きちんと給料が振り込まれる。そのお金は、どこを通って自分の口座まで来ているのか。

官公庁の統計と、実際に売られているクラウドサービスの価格表を開いて追いかけたところ、経路は4段ありました。会社の売上 → IT予算 → その中の人件費 → 等級表の給与レンジ。 営業職が「売った額 × 率」の1段で決まるのに対して、社内SEの給料は4段を通ります。段が多いほど、動かすのに時間がかかる。

社内SEという職種そのものの説明や、転職の道順は別の記事に譲ります。ここで扱うのは、お金の出どころだけです。

社内SEの年収は、どこから出ているのか

社内SEの給料は、会社の売上から直接ではなく「IT予算」という枠を通って出ます。売上→IT予算→人件費→等級表という4段の経路です。求人サイトが掲載求人から集計した社内SEの平均年収は約430万円※1。この430万円は席に付いた値段で、最終的な額は等級表のどの段に座るかで決まります。

求人ボックスが2026年9月に掲載求人から集計した数字を、まず置いておきます※1。

項目 数字
平均年収(掲載求人の中央値) 約430万円
月給に換算すると 約36万円
初任給の相場 約24万円
ボリュームゾーン 341〜404万円
全体の給与幅 341〜846万円

下は341万円、上は846万円。2.5倍の開きがあります。 同じ「社内SE」という3文字で募集していて、これだけ違う。

営業職なら、この幅の理由はすぐ分かります。売った額が違うからです。ところが社内SEは、何をどれだけ売っても売上が立ちません。それなのに開きがある。ここが、この職種のお金の話がややこしくなる入口です。

答えは、お金が通ってくる経路の長さにあります。

営業職 会社の売上 → 歩合・賞与 → 自分の年収

社内SE 会社の売上 → IT予算 → 人件費の枠 → 等級表のレンジ → 自分の年収

4つの関門のどこかが締まると、自分の手取りまで届きません。逆に言えば、どこが締まっているのかさえ分かれば、打ち手も決まります。

求人票の430万円は「席の値段」で、「自分の値段」ではない

求人票に書いてある年収は、会社がその席に出せる下限と上限です。個人を見て決めた額ではなく、先に等級表があって、そこから逆算して書かれた帯になります。

だから、面接で「いくら欲しいか」を聞かれたときに困る。自分の相場を答えても、相手は等級表のどの段に置くかを考えている。会話が噛み合っていない、という状態がよく起きます。

社内SEの席がそもそもどう開くのか、選考で何を見られるのかは、こちらで数字を並べました(→社内SE転職の道順|即戦力64.1%・補充44.3%が決める、受かる人の入り方)。

社内SEの年収を決めているのは、等級表という1枚の紙

月の所定内給与は非役職者30.28万円、係長級38.59万円、課長級51.20万円、部長級62.72万円と段ごとに分かれる。

等級表は、社員を段に分けて、段ごとに給与の幅を決めた表です。厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和6年)で役職別の賃金を見ると、非役職者30.28万円、係長級38.59万円、課長級51.20万円、部長級62.72万円※2。同じ段に座っている限り、給料はその段の幅の中でだけ動きます。

数字をそのまま並べます。ここでいう賃金は、6月分の所定内給与額です。残業代と賞与は含みません※2。

役職 月の所定内給与 非役職者を100としたとき 平均年齢
非役職者 30.28万円 100.0 41.5歳
係長級 38.59万円 127.4 45.6歳
課長級 51.20万円 169.1 49.3歳
部長級 62.72万円 207.1 53.0歳

12か月ぶんに直すと、非役職者363.4万円、係長級463.1万円、課長級614.4万円、部長級752.6万円。ここに賞与が乗ります。

先ほどの求人票の帯(341〜846万円)と、ほぼ重なりました。求人票の幅の正体は、等級表の段そのものだったわけです。

この段の分け方が、なぜ日本の会社でこういう形になったのか。そこだけを一冊まるごと扱っているのが、海老原嗣生さんの人事の組み立て 脱日本型雇用のトリセツです。職能資格と職務等級がどう違い、日本の会社がなぜ両方を混ぜた形に落ち着いたのかを、制度の側から追っています。

段の中で動く幅と、段を移るときに動く幅は、桁が違う

もう一度、上の表を縦に見てください。非役職者から課長級まで、月の所定内給与で20.92万円の差があります。 年に直すと251.0万円。

この差は、毎年の昇給では埋まりません。次の節で、その埋まらなさを数字にします。

社内SEの年収が大きく動くのは、昇給のときより昇格のとき

厚生労働省の調査では、令和6年の1人平均賃金の改定率は4.1%、改定額は11,961円で、比較できる平成11年以降で最高でした※3。いっぽう非役職者から課長級への段差は69.1%です※2。4.1%の昇給を13.1年積み上げて、やっと昇格1回ぶんに届く計算になります。年収を動かしたいなら、昇給率より昇格の設計図を見たほうが早い。

令和6年の賃金改定は、かなり良い年でした※3。

  • 1人平均賃金の改定額:11,961円(前年9,437円)
  • 1人平均賃金の改定率:4.1%(前年3.2%)
  • 賃金を引き上げた・引き上げる企業の割合:91.2%(前年89.1%)

過去最高です。それでも、年収430万円の人にとっての4.1%は17.6万円。翌年の年収は447.6万円になります。

いっぽう、課長級の所定内給与51.20万円は、非役職者30.28万円の1.691倍です。この倍率に4.1%の複利で追いつくには、13.1年かかります(log 1.691 ÷ log 1.041 = 13.07)。係長級の1.274倍でも6.0年ぶん。

つまり、こうです。

動き方 1回で動く幅 起きる頻度
昇給 4.1%(令和6年・過去最高の年) 年1回
係長級への昇格 27.4% 昇給6.0年ぶん
課長級への昇格 69.1% 昇給13.1年ぶん

昇格の階段は、平均で4年に1段

段の平均年齢を引き算すると、階段の間隔が分かりました。非役職者41.5歳 → 係長級45.6歳(4.1年)→ 課長級49.3歳(3.7年)→ 部長級53.0歳(3.7年)※2。

平均するとおよそ4年に1段。 毎年の昇給はその段の中の微調整で、階段そのものは4年に1度しか来ない。社内SEの年収の話をするとき、この階段の位置を先に確かめておくと、話はずいぶん具体的になるはずです。

社内SEの年収の元になるIT予算は、何で増えて何に消えるのか

日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が981社に聞いた調査では、IT予算が増える理由の1位は「円安・人件費高騰・ベンダー提供価格の値上げなどによる影響」でした※4。予算配分はランザビジネス76.2%対バリューアップ23.8%※4。枠そのものは増えていても、増えた分の多くは値上がりの吸収に回ります。

社内SEの人件費が置かれているのは、このIT予算という枠の内側です。だから枠の性質を知っておくと、自分の給料の上がり方が読めます。

JUASの調査で目を引いたのは、増加理由の1位です。新しいシステムを入れるからでも、事業を変えるからでもなく、「円安・人件費高騰・ベンダー提供価格の値上げなどによる影響」が先頭に来ていました※4。

予算が10%増えたとしても、その多くはすでに使っているものの値上がりで消えます。枠が広がったように見えて、中で自由に動かせる部分は思ったほど増えていない。 社内SEの年収が景気の良さほどには跳ねない理由の1つは、ここでした。

kintoneの利用料と自分の給料は、同じ財布から出ている

枠の内側でどんな競争が起きているかを、実際に売られている値段で見てみます。サイボウズのkintoneは、料金表を公開しているクラウドサービスです(2026年9月30日時点、税抜)※5。

コース 月額(1ユーザー) 年額(1ユーザー)
ライトコース 1,000円 12,000円
スタンダードコース 1,800円 21,600円
ワイドコース 3,000円 36,000円

従業員300人の会社が、スタンダードコースを全社員ぶん契約したとします。21,600円 × 300人 = 年648万円。

先ほどの課長級の所定内給与、年614.4万円。ほぼ同じ額です。 そしてこの2つは、同じIT予算という財布から出ています。

kintoneがどういう道具なのかを、4つの角度で書き出しておきます。

  • 誰に売っているか … Excelと紙に散らばった申請書・台帳・日報を、1か所にまとめたい会社
  • いくらで … 1人あたり年21,600円(スタンダードコース)
  • 何を解決するか … 業務に合わせた小さな仕組みを、外注せずに社内で作り替えられる状態
  • なぜ選ばれるか … 値段が「1人あたりいくら」で先に決まる。決裁する側は、使い始める前に総額を計算できる

最後の1行が、今日の話の肝です。値段が先に見える側は、決裁を通しやすい。 人を1人増やす判断は、増やしたあとでしか効果を測れません。だから同じ枠の中では、価格表のあるものから先に通っていく。

これは社内SEの価値が小さいという話ではなく、説明の順番の話です。自分の仕事を「先に見える形」の数字に翻訳できる人ほど、同じ枠の中で強くなります。止まらなかった日数、減らした問い合わせ件数、まとめ直して下げた年間のライセンス費用。数字にできるものは、思っているより多いはずです。

社内SEの年収の伸び方は、勤め先の業種で変わる

同じ賃金改定の調査を産業別に見ると、金融業・保険業4.6%、製造業4.4%、情報通信業4.3%、医療・福祉2.5%と開きがあります※3。社内SEはユーザー企業に勤めるので、IT業界の相場ではなく「自分の会社が何で稼いでいるか」が年収の伸びを決めます。

令和6年の産業別の数字を、抜き出して並べます※3。

産業 1人平均賃金の改定額 改定率
金融業,保険業 15,465円 4.6%
製造業 13,262円 4.4%
情報通信業 14,989円 4.3%
卸売業,小売業 11,922円 4.3%
不動産業,物品賃貸業 12,554円 4.0%
運輸業,郵便業 9,030円 3.2%
教育,学習支援業 7,176円 2.7%
医療,福祉 6,876円 2.5%

金融業・保険業と医療・福祉で、改定率が2.1ポイント違います。改定額で見ると8,589円の差。

ここが、社内SEの年収の見落としやすいところです。社内SEは、情報通信業の会社にいるとは限りません。 製造業の情シス、小売業の情シス、病院の情シス。仕事の中身が同じでも、乗っている船が違えば、毎年の昇給の原資も違います。

買う側から見ると、当たり前の話でもあります。賃上げの原資は本業の値上げ余地から出ます。値段を上げやすい商売をしている会社ほど、社内の給料も上げやすい。逆に、値段が公定価格で決まっている業界は、そこを自由に動かせません。

だから、社内SEが年収を動かす最短経路の1つは、職種を変えることではなく、乗る船を変えることです。IT業界の側でお金がどう流れているかを先に見ておきたい場合は、こちらが入口です(→SIerとは|作った量の47%を外に出しても売上が立つ仕組みと向いてる人)。

社内SEの年収1000万円には、どの経路で届くのか

部長級の所定内給与は月62.72万円、12か月で752.6万円です※2。ここに賞与が乗ると1000万円が射程に入ります。経路は3つ。等級を上げる、IT予算の大きい会社へ移る、IT職向けに別の給与テーブルを持つ会社を選ぶ。どれも「等級表を動かす」という同じ話です。

1つずつ見ます。

経路1:等級を上げる。 いちばん素直な道で、いちばん時間がかかります。平均すると4年に1段、課長級まで行けば非役職者比169.1でした※2。ただし段の数は会社が決めるので、自分の努力だけでは速度を変えにくい。

経路2:IT予算の大きい会社へ移る。 同じ等級でも、枠が大きい会社のほうが1段あたりの金額は大きめです。前の節で見たとおり、業種によって賃上げの原資も違います。転職で年収が動く理由の多くは、能力の評価が変わったからではなく、乗った船の大きさが変わったからです。

経路3:別の給与テーブルを持つ会社を選ぶ。 これが近年出てきた道です。JUASの調査には、企業が自由記述で答えた工夫が載っていて、その中にこんな一文がありました※4。

IT人材向けの別会社を設立し、6か月おきにスキル獲得の結果を基本給に反映する制度を導入

既存の等級表の中で上限に当たったので、表そのものを別に作った。 会社としては大がかりな手ですが、裏を返せば「1つの等級表で全職種を並べる形が、IT職には合わなくなってきた」という認識が広がっているということでもあります。

同じ文脈で、資格取得を給与に反映する制度や、スキルを可視化してキャリアパスを描けるようにする制度も挙がっていました※4。求人票を読むときは、年収の帯だけでなく、IT職向けの制度が別に用意されているかを見ると、上限の高さが推し量れます。

なお、その上限のもう1つの目安になるのが、同じ仕事を外に出したときの値段です。外注の値段がどう決まるかは、こちらで分解しました(→人月単価とは|1人月145.7時間の値段が決まる場所と、差額の行き先/→多重下請け構造とは|売上の33.5%が外注に回る仕組みと自分の層の確かめ方)。

働く側から見て、社内SEの年収の動き方は自分に合うか

社内SEの給料はIT予算という枠から出るので、月ごとの売上の上下がそのまま反映されません。上がるのに時間がかかるかわりに、悪い月が来ても額が変わらない。この動き方が合うかどうかは、向き不向きというより、お金の受け取り方の好みに近い問題です。

ここだけは、統計ではなく自分の話を書きます。

会社員だったころ、お金のもらい方をバイトの時給の感覚で捉えていました。1時間そこにいれば、お金がもらえる。恥ずかしながら、その程度の理解でした。

その後、個人事業主としてフルコミッション(完全歩合。売れた分だけ収入になる形)で働いてみて、初めて分かりました。自分の売上が悪くても毎月決まった給料が入ることが、どれだけありがたいか。

会社が固定給を払えるのは、会社の側に、売上が上下しても払える仕組みがあるからです。その仕組みの一部が、この記事でずっと追いかけてきた4段の経路でした。売上を一度IT予算という枠に置き換え、その枠から人件費を出す。段を挟むぶん反応が鈍くなりますが、鈍いというのは、悪い方向にも鈍いということです。

今でも会社に文句ばかり言ってしまうし、すぐ忘れます。ただ、あの苦しさを思い出すと、固定給という仕組みのありがたみが戻ってきます。

社内SEの年収を見るときの質問は、だから2つです。「額はいくらか」と「額はどう決まるか」。 求人票が教えてくれるのは前者だけで、後者は等級表とIT予算の側にあります。長く働く場所を選ぶなら、後者を先に聞いておいたほうが、あとで驚かずに済むはずです。

社内SEの年収を、もう一度1枚にまとめる

社内SEの給料は売上からIT予算と等級表を通って出るため、昇給より昇格で大きく動く。

社内SEの求人相場は約430万円※1、等級表の段は非役職者30.28万円から部長級62.72万円まで※2、昇給は年4.1%で昇格は1回69.1%※2※3。お金は売上→IT予算→人件費→等級表の4段を通ります。どの段が締まっているかを見れば、次に打つ手も決まります。

ここまでに出た数字を、順番に並べ直しました。

段階 数字 そこから決まること
求人の帯 平均約430万円/幅341〜846万円 帯は席の値段。個人の評価ではない
等級表 非役職者30.28万円→部長級62.72万円 座っている段の幅の中でしか動かない
昇給 年4.1%(令和6年・過去最高) 1年で17.6万円(430万円の場合)
昇格 課長級で69.1%=昇給13.1年ぶん 狙うのは階段。間隔は平均4年
IT予算 増加理由1位は人件費・価格の高騰 枠は増えても自由枠は増えにくい
枠の中の競争 kintone300人ぶん648万円 対 課長級614.4万円 効果を先に見える数字に翻訳する
業種 金融4.6%/医療・福祉2.5% 職種より乗る船で伸びが変わる
1000万円 部長級752.6万円+賞与 等級・船の大きさ・別テーブルの3経路

社内SEの年収の話は、自分の市場価値を測る話に見えて、実際は自分が座っている仕組みを読む話でした。読めるようになると、次にどこを動かせばいいのかが、だいぶはっきりします。

同じ読み方は、どの業種にも当てはめられます。稼ぎ方を4つの型で並べた俯瞰図が入口です(→業界研究とは|稼ぎ方を4つの型に分ける俯瞰図の作り方)。身近な業種の儲け方を短く並べたほうから読みたい場合は、こちらへどうぞ(→儲かる仕組みとは|花屋・質屋・銀行など10業種のビジネスモデル一覧)。

出典

Amazonのアソシエイトとして、儲けの構造は適格販売により収入を得ています。

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