証券会社の儲かる仕組み|株の売買手数料は、すでに無料です
ネット証券の国内株式の売買手数料は、いまや無料が当たり前。では証券会社はどこで利益を出しているのか。答えは、信用取引の金利、投資信託を持ち続けてもらうことで入る報酬、そして注文の流れそのもの。無料の裏側を知ると、この業界の仕事の中身が見えます。
「証券会社 やめとけ」「証券会社 営業 きつい」で検索する人が知りたいのは、たぶん「何を売る仕事なのか」だと思います。
手数料が無料になった以上、株の売買を勧める仕事ではなくなりました。では、何を勧める仕事になったのか。そこを数字から追いかけます。
実例|国内株式の売買手数料は0円。ただし電話注文は2,200円
三菱UFJ eスマート証券では、国内株式(現物・信用・プチ株)の取引手数料が無料です。ただし条件があり、SOR注文を選ぶ必要があります。そして電話でオペレーターに頼むと、別途2,200円(税込)がかかります。この0円と2,200円の差が、この商売のすべてを語っています。
| 注文の仕方 | 手数料 |
|---|---|
| 自分でネットから注文(SOR注文を選択) | 0円 |
| 電話でオペレーターに頼む | 2,200円(税込)が加算 |
手数料の出どころ:三菱UFJ eスマート証券「手数料」(2026年7月時点。名証・福証・札証が主市場の銘柄は対象外)
この2,200円は、何の値段なのか
人が対応する時間の値段です。
同じ「株を1回買う」でも、自分で画面を操作すればタダ、人に頼めば2,200円。証券会社が売っているのは株ではなく、人手だったということになります。
そして、ほとんどの人はネットで注文します。つまり、この会社の収入のほとんどは手数料以外から来ていることになります。
手数料が0円で、どこから利益が出るのか
売買手数料をゼロにできるのは、他に収入の柱があるからです。信用取引でお金や株を貸す金利、投資信託を持ち続けてもらうことで毎年入る報酬、外貨の両替、そして注文をどこで成立させるか。この4つが柱でした。
1. 信用取引の金利 ─ 貸すことで受け取る
信用取引は、証券会社からお金や株を借りて売買する仕組みです。借りている間、金利が発生します。
これは銀行や質屋とまったく同じ「貸す型」でした。売買そのものではなく、貸している時間に対して受け取ります。その考え方は銀行員の年収が高い理由で詳しく書きました。
2. 投資信託の信託報酬 ─ 持ち続けてもらうことで受け取る
投資信託は、買った瞬間ではなく持っている間ずっと、資産の一定割合が運用会社や販売会社に入ります。
ここがいちばん大きな違いです。
| 株の売買 | 投資信託 | |
|---|---|---|
| いつ入るか | 売買したとき1回(いまは0円) | 持っている間ずっと |
| 型 | 手数料型 | 継続課金型 |
売り切りから、継続課金へ。この移り変わりが、証券会社の仕事の中身を変えました。
3. 外貨の両替 ─ 買うときと売るときの差
外国株を買うには円をドルに替えます。替えるときのレートに、証券会社の取り分が乗ります。
4. 注文の流れそのもの
手数料が無料になる条件だった「SOR注文」は、複数の市場から有利な価格を探して注文を出す仕組みです。どこで成立させるかを会社が選べる形になっています。
だから、証券会社の営業の仕事は変わりました
売買のたびに手数料が入っていた時代は、回転させることが成績になりました。いまは、預けた資産をどれだけ長く預けてもらえるかが成績になります。この転換が、働く側から見た最大の変化でした。
昔と今
| 手数料が高かった時代 | いま | |
|---|---|---|
| 収入が入るとき | 売買したとき | 預かっている間ずっと |
| 評価される行動 | 取引の回数 | 預かり資産を増やし、続けてもらう |
| お客さんとの関係 | 売って終わり | やめられたら終わり |
「やめられたら終わり」という形は、SaaSとまったく同じでした。その仕組みはSaaS業界のビジネスモデルに書いています。
ここに、割り切れなさが残ります
銀行に勤めていた知人が、こう言っていたことがあります。
人をだましている気持ちになる。
自分はもっとその人にぴったりの商品を知っているのに、利益になる商品だけを勧めなければならない。そういう場面があった、という話でした。
報酬を受け取ること自体は、悪いことではありません。商品を選び、説明し、その後の相談にも乗る。人の手がかかるのだから、対価は当然です。
割り切れなさが出るのは、別のところでした。相手が、自分で判断できる材料を持っているかどうかです。
証券会社に向いてる人・向いてない人
向いているのは、数字が下がった日にこそ連絡できる人です。相場には、必ず下がる日が来る。そのとき逃げずに電話をかけられるかどうかで、預かり資産が続くかどうかが決まります。
向いてる人
- 下がった日に連絡できる… 上がった日は誰でも連絡できます
- 分からないことを分からないと言える… 相場を当てる仕事ではありません
- 数字を自分で確かめる… 信託報酬も、金利も、公開されています
向いてない人
- 相場の上下で気持ちが動く… 自分が揺れると、お客さんはもっと揺れます
- 売って終わりにしたい… いまの収益構造では成立しません
未経験から入るとき、面接で聞けること
面接で「御社の収益のうち、預かり資産に連動する部分は何割ですか」と聞けると、話が一段深くなります。売買手数料が無料になった以上、この比率こそがその会社の現在地。答えを聞けば、自分が何を求められるかも分かります。
そしてもう1つ。「未経験の方が最初の1年で担当するのは、どんな業務ですか」と聞いてください。
証券会社は資格の取得が必要な仕事です。入ってすぐ売る仕事とは限りません。そこを確かめておくと、入ってからの1年が想像できます。
まとめ:無料の裏側を知ると、仕事の中身が見えます
証券会社の稼ぎ方は、こうなっていました。
- 国内株式の売買手数料は0円。ただし電話注文は2,200円。人手の値段がここに出ている
- 利益は信用取引の金利・投資信託の信託報酬・外貨の両替・注文の流れから
- 売り切りから継続課金へ移った。だから「預かり続けてもらう」ことが仕事になった
- 営業に求められるのは、下がった日に連絡できること
手数料が無料だからといって、タダで何かを受け取れるわけではありません。どこで払っているかを知っておけば、こちらも判断できます。
他の業界がどこで稼いでいるかと並べると、証券という商売の位置がはっきりします。主な型をひととおり並べたのが儲かる仕組みの一覧です。

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