派遣会社のマージン率とは|仕組みと平均、法律で公開される理由

派遣会社のマージン率とは?会社の取り分ではなく、経費を含んだ差額です

マージン率とは、派遣先が払う料金と、派遣スタッフに支払われる賃金の差が、料金全体に占める割合です。この差は会社の利益そのものではありません。社会保険料の会社負担、有給休暇の費用、募集の広告費が、ここから出ていきます。仕組みを分解すると、数字の意味が変わります。

「マージン率が30%なら、3割も抜かれている」。そう受け取る人は少なくありません。

私は派遣会社の営業を長くやってきました。経歴のほぼすべてがこの人材ビジネスです。さまざまな業界・職種へ人を送り出してきて、それぞれの現場の稼ぎ方も見てきました。

そのうえで書きます。この差額の中身を知らないまま働くと、自分の給料の決まり方も分からないままになります。働く側にとっても、営業をする側にとっても、ここが出発点でした。

マージン率は法律で公開が義務づけられています

派遣元の会社は、マージン率を関係者に知らせなければならないと法律で決まっています。労働者派遣法の第二十三条にその定めがあり、各社が自社のサイトなどで公開する形です。つまり、あなたが登録を考えている会社の取り分は、入る前に調べられます。

条文には、こう書かれています。

派遣に関する料金の額の平均額で除して得た割合として厚生労働省令で定めるところにより算定した割合、教育訓練に関する事項その他……に関し情報の提供を行わなければならない。

出どころ:e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」第二十三条

これは、他の業界にはあまり無い決まりです。飲食店が原価率を公開する義務はありませんし、小売店も仕入れ値を出しません。

人を扱う商売だからこそ、取り分を隠せない仕組みになっていると考えると、見え方が変わります。

実例|派遣料金17,017円、賃金11,688円。差の5,329円はどこへ行くのか

厚生労働省の集計では、8時間あたりの派遣料金が17,017円、派遣スタッフの賃金が11,688円でした。差は5,329円で、マージン率にすると31.3%になります。これだけ見ると派遣会社ってボロ儲けしてるように見えますが、この5,329円が丸ごと利益になるわけではありません。何にいくら出ていくかを、順に見ていきます。

8時間あたり(平均)
派遣先が払う料金 17,017円
派遣スタッフの賃金 11,688円
差額 5,329円(31.3%)

数字の出どころ:厚生労働省「労働者派遣事業の事業報告の集計結果について」(平成25年度 労働者派遣事業報告書の集計結果。一般労働者派遣事業の平均)

※ この料金と賃金は平成25年度の集計値です。いま検討している会社の数字は、その会社の公開ページで確認してください。法律で公開が義務づけられているので、必ずあります。

差額から出ていくもの

営業として、この5,329円が何に消えるかを毎日見てきました。

  • 社会保険料の会社負担… 健康保険も厚生年金も、会社が半分を負担します
  • 有給休暇の費用… ここがいちばん重い。理由は次で説明します
  • 募集の広告費… 人が集まらないと、そのぶん経費が膨らみます
  • コーディネーターや営業の人件費、登録場所の家賃… 現場を回る人の給料もここから出ます

有給休暇が、なぜいちばん重いのか

ここが、この商売のいちばん独特なところです。

時給で契約している場合、働いていない時間は派遣先に請求できません。ところが、有給休暇を取った日の賃金は、派遣会社がスタッフに支払う。

派遣先からは入ってこない。スタッフには払う。

しかも有給の日数は、勤続年数とともに毎年増えていきます。

ここに、この商売の矛盾がありました。

会社が望むこと 同時に起きること
せっかく集めた人に、長く働いてほしい 長く働くほど有給が増え、負担も増える

この2つが、同じ会社の中で同時に起きています。

解き方は1つしかありません。派遣先との価格交渉です。ここができないと、同じ人を長く送り続けるほど利益が減っていきます。

社会保険も有給も、スタッフにとっては当然の権利です。そこは動かしません。20年前は悪徳な会社もありましたが今はさすがに無いはず。ただ、その費用を誰が負担しているかは見えにくく、それが不満につながりやすい。説明できる営業とできない営業で、差が出るところでした。

派遣会社の営業がきついと言われる理由

派遣会社の営業がきついと言われるのは、在庫を持たずに始められる商売で、参入が多く、価格競争になりやすいからです。各社の違いを出しにくいため、料金もスタッフの時給も比べられます。この構造を知ると、何をすれば抜け出せるかも見えます。

1. 参入しやすい商売である

在庫を抱えず、大きな設備も要りません。だから起業しやすく、競争が激しくなります。

厚生労働省の集計では、令和7年6月1日現在で44,110の事業所がありました。派遣で働く人は約201万人です。

数字の出どころ:厚生労働省「労働者派遣事業の令和7年6月1日現在の状況(速報)」

2. 違いを出しにくい

同じ地域で、同じような仕事を紹介する会社が並んでいます。価値の違いを説明しにくいので、料金と時給で比べられます。

3. 3年の区切りがある

同じ部署で働き続けられる期間には上限があります。いわゆる抵触日です。

ただし、これは悪いことばかりではありません。3年で派遣先の社員になってもらうほうが、派遣会社にとっても良い結果になる場面があります。スタッフの働き先が安定し、派遣先との信頼も残るからです。

派遣会社で働く人・派遣で働く人、それぞれの見方

マージン率の中身が分かると、派遣会社の営業が何をする仕事かと、派遣で働く人が何を確かめるべきかが同時に見えました。営業は価格を守る仕事、働く側は自分の時給の根拠を知る作業。同じ数字を、両側から見ることになりました。

派遣会社の営業を考えている人へ

この仕事の腕は、価格交渉ができるかどうかに出る。

スタッフの時給を上げるにも、会社の利益を残すにも、派遣先への請求額を動かすしかありません。「値下げしない理由」を説明できる人が、結局いちばんスタッフを守れます。

そして、さまざまな業界へ人を送るので、業界の中身が自然と分かるようになります。これは他の職種ではなかなか得られません。

派遣で働くことを考えている人へ

登録する前に、次の3つを見てください。

  1. その会社のマージン率… 法律で公開されているので、必ずあります
  2. 教育訓練の中身… これも同じ条文で情報提供の対象になっています
  3. 3年後にどうするつもりか… 派遣先の社員になる道があるかどうか

マージン率が低ければ良い会社、というわけではありません。教育や福利厚生に費用をかけている会社は、そのぶん差額が大きくなります。「何に使っているか」まで聞けると、比べ方が変わります。

まとめ:マージン率は、隠されていない数字です

派遣会社の稼ぎ方は、こうなっていました。

  • 派遣先が払う料金と、スタッフの賃金の差額で成り立っている
  • その差額(平均で8時間あたり5,329円、31.3%)から、社会保険料・有給・広告費・人件費が出ていく
  • 有給の負担がいちばん重い。働いていない分は請求できないのに、支払いは発生する
  • だから価格交渉ができるかどうかが、この商売の腕になる

そして、いちばん覚えておいてほしいことがあります。マージン率は、法律で公開が義務づけられています。

他の多くの業界では、会社の取り分は分かりません。この業界では、入る前に調べられます。使わない手はありません。

他の業界がどこで稼いでいるかと並べると、派遣という商売の位置がはっきりします。主な型をひととおり並べたのが儲かる仕組みの一覧です。

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